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Perfect World エプロンの中で携帯がふるえているけど今は仕事中だし、相手はそんなこともわかっててかけてるんだから出ることもない。いっそのこと、携帯なんてロッカーに入れてしまえばいいのに、それをしないじぶんもたいがい往生際が悪いのだ。
バーコードリーダを山積みのビデオケースにあてがいながら、暇をもてあましてコードレスフォンをもてあそんでいる彼を思いだす。 思いがけず、留守電がはいってる。 そのひとの潔さや力づよさ、まっすぐな目線と歩いてきた道の痛み、思いがけない夜の体温のつめたさ、隠しきれないあたりまえの弱さや、抱いている夢の大きさと誇らしさを、しずかに思いだして、涙ぐんでしまうことがある。 そのとき世界はほんの一瞬、完全なのだと思う。 ** end ** |